たぶん、届かない想いも

一人の少年がおりました。

山のなかなので、滅多に通らない汽車にあこがれて、一目みたくて、二キロ以上ある道を歩きとおし、やっと走るそれを見ることができました。

次のも見たい。


夕暮れ時になり、心配して年の離れた姉が様子を見に行きます。さあもう帰ろう、と呼ばれると、イヤダ!と、余計に山のなかに駆けあがり、姉を困らせてしまいました。


そんな話にあこがれて、後に無類の電車好きになった娘が、居ました。少年の同郷から出た学者にもあこがれて後にその道をめざします。また、少年が就いた仕事の現状や未来について、口数少ないながらも時おり語るのをできるだけ覚えて反芻し、その業界がその通りの道を歩んでいくのを、批判と尊敬の念を混ぜて、今でも変わらず俯瞰しています。

でも、人は、変わるのでしょうか。すっかり汽車にみとれていた気持ちを、忘れてしまうのでしょうか。娘がそんな思いで、幼い頃から、滅多に話もできない背中を追いかけてきたことを、知らないまま時は過ぎ続けるのでしょうか。



最初から、嫌われていたのかな。


今日は、大切な人に最後に会った日。大切な人を失った日。二人とも、もう2度と会えません。だけど、メリークリスマス。イブだけど。みんなの想いが繋がりますように。