噴火

普段、登山と聞くと身構える。

疲れることが大の苦手だからだと私を知る人は思うでしょうが、理由はちがう。

山は、高いところは特に、人間の入るところではない。
気がするから。畏敬の念をもって下から眺めるものだという古くさい感覚がどうしてもある。


でも、勝手ながら御嶽山はどこか別だった。


何十年?も前、御嶽山の小屋でバイトをして夏を過ごした人がいて、昼間の昼間がひまな時間になり、寝っころがってながめる景色の美しさは、いつまででも居たいぐらいだと、語ってくれたことがあった。彼はどちらかというとあなた、山、好きだっけ?と見えるタイプだったのも吹き飛び、以来行ったこともないくせに、御嶽山はよい山だ、一度私も行きたいな、に変わっていたのである。


別に無防備な冬山挑戦ではない。装備も地図もなく山を知らずに人間の日程を山に持ち込んだわけでもない。美しさにひかれて、紅葉を楽しみたかったろう、それじたいが人間の近づくべき領域ではないと普段の私ならいうところ、なんだか泣けてくるのである。

ポンペイだったか、あの遠い昔のまちを思い浮かべてしまう。